この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- リバースモーゲージの失敗事例3選
- 相続時のトラブルに
- 金利上昇が生活を圧迫
- 長生きにより資金が枯渇
- リバースモーゲージで失敗しないために!FP相談を活用しよう
- 【実際どうだった?】リバースモーゲージを利用した人の体験談
- リバースモーゲージで「失敗した」と思うことはありましたか?
- それはどのようなことでしたか?
- リバースモーゲージを検討している人にアドバイス
- リバースモーゲージで失敗しない人の特徴
- 自宅を子どもに相続する予定がない人
- 長生きリスクを許容できる人
- 金利上昇に備えられる人
- リバースモーゲージで失敗しないための対策
- 家族と相続について話し合う
- 綿密にマネープランを立てる
- 複数の金融機関を比較検討する
- 失敗しないリバースモーゲージの活用法をマネーキャリアと考えよう
- 【まとめ】リバースモーゲージの失敗を知り申し込みの判断を
リバースモーゲージの失敗事例3選
リバースモーゲージは自宅を担保に老後資金を借り入れる制度で、年金だけでは不安な老後の生活を支える制度です。しかし、契約内容を十分理解せずに利用すると、予期せぬトラブルに巻き込まれるケースがあります。
ここでは、実際に起こりやすい3つの失敗事例を詳しく解説し、どのような点に注意すべきかを具体的に見ていきましょう。
相続時のトラブルに
60代女性
家を失った突然の知らせ
リバースモーゲージの深刻な失敗例は、相続時に家族間でトラブルが発生するケースです。この制度では、契約者が亡くなった際に担保不動産の売却か一括返済で精算するのが一般的です。家族が契約内容を把握していないと、突然自宅を失う事態に直面する場合があります。
とくに問題となるのが「リコース型※」と呼ばれる以下のような契約形態です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 契約形態 | リコース型(Recourse型) |
| 特徴 | 契約者が亡くなった後、 不動産を売却して借入金を返済する |
| 問題点 | 売却代金で借入金を完済できない場合 不足分を相続人が負担する |
| 注意点 | 家族に負担が及ぶ可能性があるため 契約前に仕組みを十分に理解し 家族にも共有する |
リバースモーゲージを利用する際「推定相続人の同意」が必要となるケースが一般的です。一方で、内容を十分に共有しないまま形式的に同意したことがトラブルの原因になる場合もあります。
金利上昇が生活を圧迫
70代男性
金利上昇で生活が圧迫
契約当初は金利が低く、返済額も少なかったため安心していました。しかし、数年後に金利が上昇し、毎月の利息支払いが想定以上に増加しました。年金だけではまかないきれず、生活費を切り詰める日々が続いています。金利の上昇でここまで負担が増すとは思わず、今は先行きに強い不安を抱えています。
リバースモーゲージのほとんどが変動金利型を採用しており、市場金利の上昇が直接的に返済負担を増やす要因です。当初は少額だった利息返済が、金利の上昇によって次第に負担が大きくなるケースも少なくありません。
長期にわたる契約では、わずかな金利の変動でも返済総額に大きな差が生じます。わずかに上昇しただけでも、年間の支払い負担が増え、積み重なると家計への影響が無視できないほどになるでしょう。
年金を主な収入とする世帯では、返済の負担増は日々の生活を圧迫し、将来の生活設計も難しくなります。
長生きにより資金が枯渇
90代男性
長生きで資金が尽きた
老後資金が不足したため、生活費の補填目的でリバースモーゲージを利用しました。当初は安心していましたが、想定より長生きしたことで借入枠を使い切ってしまい、その後の生活費を賄えなくなっています。結局、子どもに仕送りを頼ることになり、自宅も残せず負担をかけてしまいました。長寿リスクを軽く見ていたことを今では後悔しています。
平均寿命が延びるなか、リバースモーゲージの融資限度額を使い切ってしまう「長生きリスク」が問題となっています。
融資限度額は担保不動産評価額の50〜60%程度※に設定されるケースが多く、想定していたよりも長生きした場合、資金が底をつく可能性があるのです。
融資上限があるため、長期間の借入で限度額に達すると新たな借入ができず、年金だけでは生活が難しくなる恐れがあります。生活資金が年金だけでは賄えない場合、最終的に自宅を失う可能性があります。
リバースモーゲージで失敗しないために!FP相談を活用しよう
リバースモーゲージの失敗は、契約前に専門家へ相談していなかったことが大きな原因です。複雑な仕組みを理解しないまま契約して後悔する人も少なくありません。
マネーキャリアのFP相談なら、あなたの老後資金計画を総合的な視点でサポートが可能です。リバースモーゲージだけに頼らず、すべての資産を踏まえたライフプランを立てることで、必要な借入額を明確にできます。
【実際どうだった?】リバースモーゲージを利用した人の体験談
ここでは、リバースモーゲージ利用者を対象に「失敗した」と感じた理由や体験についてアンケートを実施しました。さらに、利用を検討している人へのアドバイスも伺っています。
実際の体験談を参考に、同じ失敗を繰り返さないための判断材料として活用してください。
※2025年10月07日~2025年10月10日時点での当編集部独自調査による
※審査や借入額は個人によって異なるためご了承ください
リバースモーゲージで「失敗した」と思うことはありましたか?
アンケート調査の結果、リバースモーゲージ利用者の3人に1人(33.3%)が「失敗した」と回答しています。この数字は決して低くはなく、制度の複雑さや理解不足が影響していると考えられます。
一方で、6割程度の利用者は「失敗していない」と答えており、事前の準備や理解度によって、満足度に差が出る結果となりました。失敗したと感じた人の多くは、契約時の説明が不十分であったり、家族との話し合いが不足していたケースが目立ちます。
それはどのようなことでしたか?
リバースモーゲージは、自宅を担保に老後資金を得られる仕組みとして注目されています。しかし、実際に利用した人のなかには「思っていたのと違った」「事前にもっと調べておけばよかった」と感じるケースも少なくありません。
ここでは、実際にリバースモーゲージを利用した方々の声を紹介し、どのような点で「失敗した」と感じたのかを見ていきましょう。
60代男性
維持費の負担が想定外だった
60代女性
想定より借入が少なかった
リバースモーゲージを利用する際、多く借りられると思っていました。しかし、査定の結果、想定よりも自宅の評価額が低く、借入上限が大幅に下がってしまいました。
60代男性
家族と意見が対立した
契約を進める際、相続人である子どもたちと意見が合わず、トラブルになりました。老後の生活資金のために利用を考えていましたが、子どもたちは「家を残してほしい」という考えで反対されました。
70代女性
施設入居で契約が無効に
自宅で暮らし続ける前提で契約していたため、途中で介護施設に入居した時点で利用条件から外れてしまいました。その結果、契約を続けられず、一括での返済を求められる状況になっています。
70代男性
金利上昇で返済額が倍増
契約当初は月3万円程度の利息返済でしたが、変動金利のため5年後には月6万円まで増加しました。金利上昇リスクの説明は受けていたものの、ここまで負担が増えるとは予想外でした。
リバースモーゲージを検討している人にアドバイス
リバースモーゲージを実際に利用した人のなかには、金利上昇による返済負担の増加や、想定より低い不動産評価額などに悩んだという声もあります。
ここでは、リバースモーゲージの利用や検討を経験した方々のアドバイスを紹介します。契約を検討している方は、実際の体験談を参考に判断材料としてください。
60代男性
メリットとリスクを整理
50代女性
焦らず知識を深めてから
リバースモーゲージは仕組みが複雑で、内容を理解しないまま契約すると後悔する可能性があります。私自身、当初はよく分からず即決できませんでしたが、結果的に調べる時間を取って正解でした。
50代男性
複数の銀行を比較しよう
リバースモーゲージは、自宅を子どもに残す予定がない人には有効な選択肢です。金融機関によって融資条件や上限額が大きく異なるため、複数の銀行に相談して比較してください。
50代女性
維持費も含めた計画をしよう
借入額や返済方法だけでなく、固定資産税や修繕費などの維持費も考慮した総合的な資金計画を立ててください。借入金で生活費を補えても、想定外の出費が重なると家計を圧迫する可能性があります。
40代男性
リスクを理解して利用する
リバースモーゲージは老後資金の選択肢として魅力的ですが、リスクを理解せずに利用すると後悔につながる場合があります。安易に契約を進めるのではなく、自分の収入や資産、将来の生活設計を踏まえたうえで慎重に判断しましょう。
リバースモーゲージで失敗しない人の特徴

リバースモーゲージは誰にでも向いている制度ではありませんが、条件が合う人には有効な老後資金の調達となります。制度を上手に使いこなせる人の特徴は、以下の3つです。
- 自宅を子どもに相続する予定がない人
- 長生きリスクを許容できる人
- 金利上昇に備えられる人
自分がどの程度当てはまるかを見直して、リバースモーゲージの利用が適しているか考えてみましょう。
自宅を子どもに相続する予定がない人
リバースモーゲージの利用が適しているのは、自宅を子どもに相続させる予定がない人です。子どもが独立しているなら、家を残すより老後資金として活用する選択が現実的です。
契約者の多くは「子どもに経済的負担をかけたくない」という思いから、相続よりも今の生活安定を優先しています。相続トラブルの心配がない分、契約もスムーズに進み、家族間の関係も良好に保てる点もメリットです。
長生きリスクを許容できる人
融資限度額を使い切るリスクを理解し問題ないと判断できる人は、リバースモーゲージを安心して利用できます。人生100年時代であるため、90歳、95歳まで生きる可能性は決して低くないため、楽観視せずに向き合える姿勢が必要です。
成功している利用者の共通点は、リバースモーゲージを唯一の生活資金源にしていない点です。また、以下のような資金計画も立てています。
・成功している人の資金計画
- 年金収入で基本的な生活費をまかなう
- 預貯金で緊急時に備える
- ゆとりある生活のためにリバースモーゲージを活用する
借入に過度に依存せず、年金や預貯金と組み合わせることで、金利変動や融資枠の上限などのリスクにも柔軟に対応できます。
金利上昇に備えられる人
変動金利型リバースモーゲージでは、金利変動への柔軟な対応力が利用のポイントです。金利変動を恐れるのではなく、管理できる要素として捉えられる人は、制度の利点を活かしながらリスクを抑えられます。
金利上昇リスクを踏まえ、返済負担を抑える計画を立てることが大切です。金利の動向や契約条件を定期的に見直し、状況に応じた返済方法や金利タイプの調整を行えば、長期的に利用を続けやすくなります。
リバースモーゲージで失敗しないための対策

- 家族と相続について話し合う
- 綿密にマネープランを立てる
- 複数の金融機関を比較検討する
家族と相続について話し合う
リバースモーゲージでは、契約者の死後に自宅が売却され返済に充てられるため、配偶者や子どもが家に住み続けられない場合が多くあります。
家族全員で「自宅を資産として残すか、老後資金に変えるか」という基本方針をはっきりさせる必要があります。とくに子どもが複数いる家庭では、全員の考えを尊重しながら話し合いする時間を設けましょう。
遺言書の作成も同時に進めると、相続時の混乱を防げます。また、配偶者が残される場合は、住まいをどうするかも含めて計画を立てる必要があります。
綿密にマネープランを立てる
老後に必要な資金は生活費だけではなく、以下のような想定外の支出が発生する場合もあります。
・想定外の支出
- 医療費
- 介護費
- 自宅のリフォーム費用
- 冠婚葬祭費
これらを考慮せずに借り入れると、資金が枯渇するリスクが高まります。まず取り組むべきは、将来の支出を具体的に洗い出す作業です。契約からの20年、30年を見通して、支出のタイミングを時系列で整理しておくと計画が立てやすくなります。
介護が必要になる可能性、配偶者の医療費なども含めて、保守的に見積もるのがポイントです。FPに依頼すれば、収入・支出・寿命リスクを総合的に分析した精緻なシミュレーションが作成できます。
複数の金融機関を比較検討する
リバースモーゲージの条件は金融機関によって異なります。金利や融資条件の違いが老後の資金計画に影響するため、内容を見比べて選びましょう。
また、不動産担保ローン※1ならまとまった資金を一度に確保できます。さらに、リバースモーゲージのリースバック※2を活用すれば自宅を手放さずに住み続けることも可能です。自分の状況に合った制度を比較検討して選びましょう。
失敗しないリバースモーゲージの活用法をマネーキャリアと考えよう
リバースモーゲージは金利変動や長生きリスクなど、複雑な要素が絡み合う制度です。一人で判断すると、将来の落とし穴を見落とす可能性が高く、取り返しのつかない失敗につながるケースもあります。
金利が上昇すれば返済額が膨らみ、不動産価格が下落すれば融資限度額が引き下げられるなど、考慮すべき要素はさまざまです。
老後の生活に不安を感じたら、一人で悩まずにFPへの相談をおすすめします。
【まとめ】リバースモーゲージの失敗を知り申し込みの判断を
リバースモーゲージは仕組みを理解し、計画的に備えれば老後資金として活用できる制度です。ただし、利用者の3人に1人が失敗を経験しており、相続トラブルや金利上昇、長生きによる資金枯渇などのリスクがあります。
失敗を避けるには家族全員での契約内容共有、金利変動や長生きリスクを踏まえた資金計画の作成、複数の金融機関での条件比較が欠かせません。
FPなら資産状況やライフプランを総合的に分析し、リバースモーゲージ以外の選択肢も含めた提案が可能です。中立的な視点から幅広い提案を受けられるため、老後の生活設計を安心して進められるでしょう。
夫が亡くなった直後、金融機関から「自宅を売却して返済してください」との通知が届きました。家族の誰もリバースモーゲージ契約のことを知らされておらず、家を残してくれると思っていたので本当に驚きました。高齢の夫が一人で契約を進めていたようで、もっと早く相談してもらえたらと今でも後悔しています。