この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
ボーナス払いで住宅ローンを繰り上げ返済するメリット

こちらでは、そんなボーナスを活用して住宅ローンの繰り上げ返済を行うメリットについて解説していきます。
- 利息の負担を大幅に減らせる
- 完済時期を早められる
利息の負担を大幅に減らせる
住宅ローンの返済は、毎月の支払いが「元本」と「利息」に分けられています。借入の初期段階では残高が大きいため、利息が占める割合が高く、なかなか元本が減らないのが一般的です。
ここで有効なのが、繰り上げ返済です。繰り上げ返済では、支払ったお金が利息ではなく、すべて「元本」に充当されます※。
繰り上げ返済により、その後の利息計算の基礎となる元本の残高をまとめて減らせます。結果として、支払う利息の総額が大幅に減り、全体的な返済負担を大きく軽減することが可能です。
完済時期を早められる
ボーナスを利用した繰り上げ返済は、ただ利息を減らすだけでなく、完済時期を前倒しできる点でも大きな効果があります。
繰り上げ返済には「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があり、それぞれ特徴や向いている人が異なります。特に、早期完済を目指したい人にとっては期間短縮型が有効で、支払う利息総額を効率的に減らせる仕組みになっています。
以下に2つのタイプの違いを表で整理しました。
| タイプ | 概要 | 向いている人 | 主なメリット |
|---|---|---|---|
| 期間短縮型 | 返済期間を短縮し、 毎月の返済額は据え置き | ・定年前に完済したい人 ・収入が安定している人 | 利息負担を最小限にでき、 返済終了時期を前倒しできる |
| 返済額軽減型 | 返済期間はそのまま、 毎月の返済額を軽減 | ・家計に余裕を持ちたい人 ・浮いたお金を他のことに使いたい人 | 月々の負担を下げられるが、 利息削減効果は限定的 |
ボーナス払いによる繰り上げ返済の効果をシミュレーション
ボーナスを使って繰り上げ返済を行うと、利息の負担が減り、完済時期を早められます。
こちらでは、繰り上げ返済の開始時期によって結果にどのような差が出るのか、以下の表にまとめています。
〈借入条件〉
・借入金額:3,000万円
・借入期間:35年
・固定金利:1.8%
・ボーナス繰り上げ返済:毎年50万円
・期間短縮型
| 項目 | ① 繰り上げ返済なし | ② 5年目から毎年50万円 | ③ 10年目から毎年50万円 | ④ 15年目から毎年50万円 |
|---|---|---|---|---|
| 総支払額 | 40,457,296円 | 37,445,363円 | 38,383,000円 | 39,141,098円 |
| 利息総額 | 10,457,296円 | 7,445,363円 | 8,383,000円 | 9,141,098円 |
| 利息軽減効果 | ― | 約301万円削減 | 約207万円削減 | 約132万円削減 |
| 完済までの期間 | 35年 | 24年3か月 | 26年4か月 | 28年3か月 |
| 返済期間の短縮 | ― | 10年9か月短縮 | 8年8か月短縮 | 6年9か月短縮 |
住宅ローンの繰り上げ返済で迷ったら、無料FP相談を活用しよう
住宅ローンの繰り上げ返済は、家計に大きな影響を及ぼすため「いつ」「いくら」実行すべきか判断するのは簡単ではないでしょう。返済額や金利の仕組みだけでなく、将来の教育費や老後資金といったライフプランも考える必要があります。自分だけで決断すると、不安が残ることも多いかもしれません。
そんな時は、専門家であるFPへの相談が有効です。プロの視点から、利用者の家計状況や将来の目標に合わせた最適な返済計画を提案してもらえます。専門家のアドバイスを活用し、より安心して計画を進められるでしょう。
ボーナス払いで住宅ローンを繰り上げ返済するデメリット・注意点

- 手元資金が減る
- 住宅ローン控除が減る可能性
手元資金が減る
ボーナスを利用して繰り上げ返済を行うと、確かに利息の軽減や返済期間の短縮といった大きな効果を得られます。
しかし、注意しなければならないのが「手元資金の減少」です。まとまった金額を住宅ローンに充ててしまうと、急な出費や生活費の変動に対応できる余裕が減ってしまう恐れがあります。
特に子どもの進学や車の購入、病気やケガといった予期しない出費が重なった場合に、十分な資金を準備できずに家計が苦しくなるリスクも考えられます。
住宅ローン控除が減る可能性
住宅ローンの繰り上げ返済には、利息を減らせるメリットがあります。一方で、年末のローン残高に応じて控除額が決まる住宅ローン控除の恩恵が小さくなってしまう点には注意が必要です。
そこで重要になるのが、繰り上げ返済によって削減できる利息の総額と、控除によって戻ってくる金額を比較することです。
例えば、金利が0.6%の場合、控除率0.7%※の方が大きいため、返済を急ぐよりも控除を受けた方が有利になるケースもあります。一方で、金利が1.5%程度であれば、控除だけでは利息の負担をカバーしきれないため、繰り上げ返済を優先する方がメリットは大きくなる場合があります。
住宅ローンの繰り上げ返済で後悔しないためのポイント

こちらでは、繰り上げ返済で後悔をしないための重要なポイント3つについて解説していきます。
- 生活防衛資金を残しておく
- 教育費・老後資金とのバランスを考える
- 繰り上げ返済手数料を確認する
生活防衛資金を残しておく
住宅ローンの繰り上げ返済を検討する際は「生活防衛資金」を確保しておくことが大切です。
生活防衛資金とは、万が一の事態に備えるための貯蓄で、収入が途絶えたり、予期せぬ出費が発生したりしても、一定期間の生活を維持できるようにするものです。一般的に、生活費の6ヶ月から1年分を目安に手元に残しておくのが望ましいとされています。
生活防衛資金があることによって、突然の病気や失業といった不測の事態が起きても、慌てずに対応できるため、安心して繰り上げ返済を進められるでしょう。
教育費・老後資金とのバランスを考える
住宅ローンの繰り上げ返済は、利息の軽減や返済期間の短縮につながるメリットがあります。
しかし、教育費や老後資金とのバランスを考えずに進めると、後々の家計を圧迫する恐れがあるでしょう。特に、子どもの進学や留学にかかる費用はまとまった金額になり、必要な時期も決まっています。
繰り上げ返済を優先しすぎると、いざというときに資金が足りなくなる事態を招きかねません。将来のライフプラン全体を見据えて、慎重に判断することが大切です。
繰り上げ返済手数料を確認する
住宅ローンの繰り上げ返済を検討する際には「一部繰り上げ返済」「全額繰り上げ返済」の各ケースで発生する手数料の有無や金額を必ずチェックしなければなりません。特にネット銀行とメガバンクでは手続き方法によって手数料に大きな差が生じることが多く、無料でできる場合もあれば、高額な手数料がかかることもあります。
以下では、主要な2行それぞれの繰り上げ返済手数料を表をまとめました。
(三菱UFJ銀行では「全額繰り上げ返済」ではなく「期限前完済」という表記。)
| 項目 | ソニー銀行
(ネット銀行) | 三菱UFJ銀行 (メガバンク) |
|---|---|---|
| 一部繰り上げ返済手数料
(インターネット申込) | 無料 | 無料 |
| 一部繰り上げ返済手数料
(窓口・電話申込など) | ー | 電話・テレビ窓口の場合:5,500円 窓口の場合:16,500円 |
| 全額繰り上げ返済手数料
(インターネット申込) | 無料 | 16,500円 |
| 全額繰り上げ返済手数料
(電話・窓口・テレビ窓口など) | ー | テレビ窓口の場合:22,000円 窓口の場合:33,000円 |
※参照:住宅ローン手数料(税込)|ソニー銀行
※参照:借りた後に差がつきます|ソニー銀行
※参照:繰上返済手数料改定のお知らせ|三菱UFJ銀行
【まとめ】繰り上げ返済のタイミングで迷ったらFPに相談しよう
本記事では、住宅ローンの繰り上げ返済についてメリットや注意点を整理し、後悔しないために意識しておきたいポイントを解説しました。
手元資金を十分に残しておくことや、教育費・老後資金との両立、さらに住宅ローン控除とのバランスなど、検討すべき要素は多岐にわたります。状況によっては「今すぐ返済したほうが良い」とは限らないため、家計やライフプラン全体を見渡した判断が大切です。