

この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
90歳まで借りられる住宅ローンはある?
結論として、単独名義で90歳まで借りられる住宅ローンは現在のところ存在しません。しかし、親子リレーローンやリバースモーゲージなどの選択肢を活用すれば、高齢でも資金調達は可能です。
高齢になってからの住宅ローン利用には制限がありますが、いくつかの選択肢を知っておけば無理のない資金計画が立てられます。年齢の壁があっても工夫次第で住宅資金は確保できるため、自分に合った方法を検討してみましょう。
完済時年齢は「80歳まで」が基本
国内の金融機関では、住宅ローンの完済時年齢を「80歳まで」に設定するのが一般的です。単独名義で90歳まで借りられる住宅ローンは現在のところ存在していません。
90歳まで借りられない理由は、金融機関が返済リスクを考慮しているためです。高齢になるほど収入の減少や健康状態の悪化により、返済が困難になる可能性が高まります。ただし、一部の金融機関では柔軟な対応をしています。
たとえば、ソニー銀行では「完済時満85歳未満(ワイド団信の場合は満81歳未満)※」という条件で、一般的な完済時の年齢条件よりも5歳ほど高い年齢まで借入が可能です。このような金融機関はごく少数に留まっているのが現状です。
選択肢① 親子リレーローン
親子リレーローンは、親が最初に返済を開始し、将来的に子どもが返済を引き継ぐ住宅ローンの仕組みです。子どもの年齢を基準に返済期間を設定できるため、親が高齢でも長期間のローンを組めます。内容は以下のとおりです。
・親が単独でローンを組む場合
- 親の年齢:65歳
- 返済期間:およそ15年
- 理由:完済時年齢が80歳までに制限されるため
- 親の年齢:65歳、子どもの年齢:35歳
- 返済期間:最長35年
- 理由:子どもが返済を引き継げるため、長期ローンが可能になる
フラット35なら、親子が同居していなくても利用できる特徴もあります。親子で協力すれば長期の借入が可能になる、頼もしい仕組みです。
選択肢② リバースモーゲージ
リバースモーゲージは、自宅を担保にして資金を借り入れ、借入人の死亡後に担保物件を売却して一括返済する仕組みです。子どもに債務負担をかけたくない高齢者に適した選択肢といえます。
通常の住宅ローンとリバースモーゲージの違いは以下のとおりです。
項目 | リバースモーゲージ | 通常の住宅ローン |
---|---|---|
返済方法 | 生存中は利息のみを返済 | 元金+利息を返済 |
返済負担 | 年金収入でも返済しやすい | 月々の負担が大きい |
債務の清算 | 借入人死亡後に自宅売却代金で清算 | 借入人が返済を継続 |
相続人の返済義務 | 原則として相続人に返済義務はなし | 残債があれば相続人が引き継ぐ |
主なリスク | 金利上昇、不動産価値下落のリスク | 収入減少で返済困難になる恐れ |
通常の住宅ローンでは毎月元金と利息を返済しますが、リバースモーゲージでは生存中は利息のみを支払います。そのため、年金収入でも無理なく返済を続けられるでしょう。
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90歳まで住宅ローンを組めない現状では、親子リレーローンやリバースモーゲージなど選択肢から選ぶ必要があります。マネーキャリアでは、ライフプランにもとづいた返済シミュレーションを行うため、将来のリスクも考慮した現実的な計画が立てられます。
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住宅ローンに精通したFPが中立的な立場でアドバイスするので、金融機関の営業担当者とは異なる客観的な視点での相談が可能です。

リバースモーゲージとは?仕組みやメリットを解説
リバースモーゲージは、自宅を担保として資金を借り入れながら住み続けられる、老後の生活を支援するための金融商品です。
老後の生活資金を確保する手段として注目されていますが、基本的な仕組みや利用条件を理解しておきましょう。
リバースモーゲージの基本的な仕組み
リバースモーゲージは、自宅を担保に金融機関から資金を借り入れる制度です。リバースモーゲージで借りた資金は、さまざまな目的に活用できます。
代表的な使い道を見てみましょう。
- 住宅の建設・購入
- 既存の住宅ローンからの借換え
- リフォーム費用
ただし、すべての利用目的が認められるわけではなく、一部の商品では使途が限定される点に注意が必要です。住宅ローンの一般的な仕組みは元金と利息を毎月返済するのに対し、リバースモーゲージでは借入期間中は利息のみを支払います。
以下の内容で支払い方法の例を紹介します。
前提条件
- 借入希望額:2,000万円
- 借入時の年齢:60歳
- 金利:2.5%(変動金利)
- 完済予定年齢:80歳
毎月の支払額の比較
借入方法 | 一般的な住宅ローン | みずほリ・バース60 |
---|---|---|
毎月の返済額 | 105,980円 | 43,750円 |
差額 | - | ▲62,230円 |
累計支払額の比較
年齢 | 一般的な住宅ローン | みずほリ・バース60 |
---|---|---|
80歳 | 約2,543万円 | 約1,050万円 |
毎月の返済負担を大幅に軽減でき、長期的に見ても累計支払額を大きく抑えられます。
リバースモーゲージの利用条件と対象者
この制度を利用するには、年齢や収入などの条件を満たさなければなりません。
住宅金融支援機構を例に、主な利用条件を紹介します。
項目 | 条件 |
---|---|
年齢 | 満60歳以上(満50歳~60歳未満も一部利用可) |
年収基準 | 年収400万円未満:返済負担率30%以下 年収400万円以上:返済負担率35%以下 |
融資限度額 | 担保評価額の50〜60%まで (上限8,000万円) |
資金用途 | 住宅建設 購入 リフォーム 借換え 入居一時金 |
担保 | 融資対象住宅および土地に第1順位抵当権設定 |
カウンセリングの受講が必須となっており、制度の理解を深めてから利用を開始する仕組みになっています。
リバースモーゲージのメリット
シニア世代にとってリバースモーゲージは、以下のような価値あるメリットをもたらします。
- 月々の負担を軽減できる
- 自宅に住み続けられる
- 相続人の負担を軽減できる
- 資金使途の柔軟性がある
生存中は利息のみの支払いのため、従来の住宅ローンと比較して月々の返済負担を大幅に軽減できます。年金収入でも無理なく返済を続けられるでしょう。
担保として自宅を提供しても、契約者が生存している限り住み続けられるため、住み慣れた環境を維持しながら資金調達が可能です。
リバースモーゲージを利用する際の注意点

メリットが目立つリバースモーゲージですが、実際に利用する際には以下のような点に注意が必要です。
- 自宅の不動産評価額が変動する可能性がある
- 金利上昇のリスクがある
- 相続人と事前に話し合いをする
これらの注意点を理解しておけば、後悔のない選択につながります。
自宅の不動産評価額が変動する可能性がある
リバースモーゲージは自宅の地価が大きく影響する仕組みのため、不動産市場の変動に注意が必要です。金融機関は定期的に担保物件の評価額を見直し、自宅の不動産評価額が下がると借入限度額も減少します。
具体的な数値を用いて考えてみましょう。
項目 | 地価下落前 | 地価下落後 |
---|---|---|
評価額 | 3,000万円 | 2,000万円 |
借入限度額 (評価額の50%) | 1,500万円 | 1,000万円 |
実際の借入額 | 1,200万円 | 1,200万円 |
超過分 | - | 200万円 |
3,000万円の評価額で1,500万円まで借りられた物件が2,000万円に下がると、限度額は1,000万円に減ります。すでに1,200万円借りていれば、200万円の返済が生じる場合があります。
金利上昇のリスクがある
多くのリバースモーゲージは変動金利タイプを採用しているため、契約期間中の金利上昇により返済額が増加するリスクがあります。低金利で借り入れても、将来の金利上昇によって返済負担が増える点には注意が必要です。
リバースモーゲージは長期間にわたる契約のため、経済情勢の変化により金利が大幅に上昇する場合があります。年金生活者にとって、毎月の支払額の増加は家計を大きく圧迫する要因となるでしょう。とくに収入が限られている高齢者にとって、予想以上の利息負担は生活の質に直接影響します。
相続人と事前に話し合いをする
リバースモーゲージは契約者の死亡後に自宅売却が前提となるため、相続人は自宅を相続して住み続けられません。とくに配偶者や子どもが同居している場合には注意が必要で、家族全員での合意形成が不十分だと、相続時に住まいの扱いをめぐってトラブルにつながる恐れがあります。
こうしたリスクを避けるには、契約前に家族で十分に話し合い、将来の住まいについての希望や不安を共有しておくことが欠かせません。必要に応じてFPなどの専門家を交えれば、冷静で客観的な判断がしやすくなります。
【まとめ】シニア世代の住宅ローン計画はFPに相談するのが安心

90歳まで借りられる住宅ローンは一般的ではありませんが、親子リレーローンやリバースモーゲージを活用すれば、高齢でも住まいに関する資金調達は可能です。
ただし、金利や不動産価値、相続への影響など慎重に考えるべき点も多くあります。シニア世代の住宅資金計画は複雑な判断を伴うため、専門家のアドバイスが欠かせません。
マネーキャリアでは、ライフプランにもとづいた返済シミュレーションにより将来のリスクを考慮した計画が立てられます。累計10万件を超える相談実績により多様なケースに対応できるため、安心して相談できます。
何度でも無料で利用できるため、事前相談で前向きに検討しましょう。
