
内容をまとめると
- 75歳以上の親を扶養に入れる場合、税制上の控除は受けられるものの、介護保険料や医療費の自己負担増など、経済的なデメリットが多くなるケースが目立つ。
- 同居・別居の違いや親の健康状態、家計の収入状況などによっても影響が大きく変わるため、単純に「節税になるから」という理由だけで判断するのは危険。
- 家庭にとって本当に得なのかどうかを知るためには、「マネーキャリア」の無料相談を活用して、プロの視点から総合的にシミュレーションしてもらうのが安心。

この記事の監修者 谷川 昌平 フィナンシャルプランナー
株式会社Wizleap 代表取締役。東京大学経済学部で金融を学び、金融分野における情報の非対称性を解消すべく、マネーキャリアの編集活動を行う。ファイナンシャルプランナー、証券外務員を取得。メディア実績:<テレビ出演>テレビ東京-テレ東「WBS」・テレビ朝日「林修の今知りたいでしょ!」
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この記事の目次
- 【結論】75歳以上の親を扶養に入れるのはデメリットが大きい
- 75歳以上の親を扶養に入れるデメリット・注意点
- 親が支払う介護保険料が高くなる
- 介護サービス費用・老人ホームの費用が高くなる
- 高額療養費の自己負担限度額が上がる
- 75歳以上になると社会保険(健康保険)の扶養には入れない
- 別居している75歳以上の親を扶養に入れるデメリット・注意点
- 調査が厳しくなり証明書等を適宜残す必要が出てくる
- 同居している場合と扶養控除額が異なる
- 同居している場合と扶養の適用額が異なる
- 75歳以上の親を扶養に入れるメリットは?
- 75歳以上の親を扶養に入れる以外の節約術3選
- 医療費控除を最大限活用する
- 世帯分離で介護サービス費用を大幅削減する
- その他の税制控除や資産運用の方法を見直す
- 親の扶養についてよくある質問
- 親を税法上の扶養に入れるための条件は?
- 「生計を一にする」の判断基準は?
- 親を扶養に入れる際の手続きは?
- 【一番おすすめ】親を扶養に入れて良いのか悩んでいる人が使うべき方法
- 【別居・同居別】75歳以上の親を扶養に入れるデメリットや注意点まとめ
【結論】75歳以上の親を扶養に入れるのはデメリットが大きい
結論、75歳以上の親を扶養に入れるデメリットは、メリットを上回ることが多いです。
本来、親族を扶養に入れるメリットは「税制上」「社会保険上」の2種類。
親が75歳以上だと後期高齢者医療制度へ加入しているため社会保険上の扶養には入れられません。よって、受けられるメリットは税制上のみ。
一方、親を扶養に入れるデメリットは、親の介護保険料や介護サービス費用などが高くなること、高額療養費の自己負担限度額が上がることなど、さまざまあります。
持病がある、介護が始まった等の事情がある場合は特にデメリットが大きくなるため、扶養に入れない方が良いです。
75歳以上の親を扶養に入れるデメリット・注意点
75歳以上の親を扶養に入れるデメリットと注意点を紹介します。
親が支払う介護保険料が高くなる
75歳以上の親を扶養に入れるデメリットは、親が支払う介護保険料が高くなることです。
まず、介護保険料は下記のように決まります。
- 第1号被保険者(65歳以上の方):自治体ごとに定められた介護保険料基準額に、親の所得と世帯の住民税課税状況によって決められる料率を乗じて計算
- 第2号被保険者(40歳から64歳の方):加入している社会保険ごとの料率で、所得に応じて計算
75歳以上の親は介護保険の第1号被保険者です。親の所得と世帯の住民税課税状況によって保険料が増減します。
多くの場合、親を扶養に入れて同世帯で(住居と生計を共に)暮らすと世帯収入が上昇。それに伴い世帯の住民税課税状況が変わると、親の介護保険料が上がるというわけです。
第1号被保険者の介護保険料はお住まいの地域によって異なります。例えば東京都中野区にお住まいの方が75歳以上の親を扶養に入れた場合、保険料が下記の表のように変わる可能性があります。
▼75歳以上の親を扶養に入れた際の介護保険料の変化の一例(東京都中野区)
介護保険料(年額) | 介護保険料(月額) | |
---|---|---|
扶養 | 26,300円 | 2,191円 |
扶養外 | 75,200円 | 6,266円 |
介護サービス費用・老人ホームの費用が高くなる
75歳以上の親を扶養に入れるデメリットは、介護サービス費用・老人ホームの費用が高くなることです。
例えば、住民税非課税となっている場合、介護サービス費負担の上限額は2万4,600円です。
扶養に入り、住民税課税世帯となってしまうと上限額は4万4,000円となり、約2万円の負担増。加えて、老人ホームに入居した際の食費・住居費も高くなります。
▼世帯の所得に応じた介護費用の負担上限額
世帯の所得 | 負担上限額 |
---|---|
生活保護世帯 | 1万5,000円 |
市町村民税世帯非課税 | 2万4,600円 |
市町村民税世帯非課税 ~課税所得380万円未満 | 4万4,400円 |
課税所得380万円 ~690万円未満 | 9万3,000円 |
課税所得690万円以上 | 14万100円 |
高額療養費の自己負担限度額が上がる
75歳以上の親を扶養に入れるデメリットは、高額療養費の自己負担限度額が上がることです。
高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払ったひと月の医療費が上限額を超えた場合、超過分の払い戻しを受けられるもの。上限額は年齢や所得によって異なります。
詳しくは、厚生労働省WEBサイト「高額療養費制度を利用される皆さまへ」を参照してください。
75歳以上になると社会保険(健康保険)の扶養には入れない
親を扶養に入れるデメリットは、75歳以上になると社会保険(健康保険)の扶養には入れないことです。
75歳以上となると、社会保険が後期高齢者医療制度へと強制的に移行するため、社会保険上の扶養には入れられなくなります。
別居している75歳以上の親を扶養に入れるデメリット・注意点
以下、「別居している」75歳以上の親を扶養に入れるデメリットと注意点を紹介します。
調査が厳しくなり証明書等を適宜残す必要が出てくる
別居している親を扶養に入れる場合、「生計を一にしている」と認められる必要があります。これは、定期的に仕送りを行い、親の生活費を支援していることを意味します。
税務署はこの点を重視し、扶養控除の適用に際して調査を行うことがあります。
特に、仕送りの記録や生活費の支出状況など、具体的な証拠を求められることがあるため、適切な記録の保存が重要です。
記録を保存しておらず不適切な申告をしてしまった場合には、後の税務調査で問題となる可能性があるため、しっかりと注意をしておく必要があります。
同居している場合と扶養控除額が異なる
扶養控除額は、親の年齢によっても異なりますが、特に「同居の有無」によっても異なります。
75歳以上の親を扶養する場合、同居していれば「同居老親等」として58万円の控除が受けられますが、別居している場合は「老人扶養親族」として48万円の控除となります。
この差額は、所得税や住民税の負担に影響を与えるため、親を不要に入れる際には、同居の可否や控除額の違いを十分に理解し、家計全体のバランスを考慮するようにしましょう。
同居している場合と扶養の適用額が異なる
別居している親を扶養に入れる場合、同居している場合と比べて、社会保険や介護保険の取り扱いが異なります。
例えば、75歳以上の親は後期高齢者医療制度の対象となり、子の健康保険の被扶養者にはなれません。
また、同居していない場合、介護保険料や介護サービスの自己負担額が増加する可能性があります。
これらの制度上の違いは、親の医療・介護費用に直接影響を与えるため、扶養の可否を判断する際には、制度の詳細を理解し、将来的な負担を見据えた計画が求められます。
75歳以上の親を扶養に入れるメリットは?
75歳以上の親を扶養に入れる以外の節約術3選
「75歳以上の親を扶養に入れる」以外にも、家計の助けになる節約術を以下3つご紹介します。
税金や介護サービスの仕組みをうまく活用することで、意外と大きな節約につながることもあります。
医療費控除を最大限活用する
「医療費控除」を活用すると、所得税や住民税が安くなる可能性があります。
たとえば、年間の医療費が10万円を超えた場合(※所得が200万円以上の方の場合)は、控除の対象になります。
ご自身だけでなく、同じ家計で暮らす家族の医療費も合算OK。通院の交通費や、市販薬を買った費用も対象になることがあるので、レシートや領収書は捨てずにとっておくのがおすすめです。
申請には確定申告が必要ですが、現在はネットで簡単に手続きができるので忘れずにチェックしましょう。
世帯分離で介護サービス費用を大幅削減する
親と同居しているご家庭であれば、「世帯分離」という方法で介護費用を抑えられる可能性があります。これは、住民票上で親と子の世帯を分ける手続きのことです。
なぜこれが節約につながるかというと、介護保険サービスの自己負担額は「世帯の所得」によって決まるからです。
親と子が同じ世帯だと、子の収入まで合算されてしまうことがありますが、世帯分離すれば親本人の所得だけで計算されるようになり、負担が軽くなる場合があります。
ただし、世帯を分けると他の制度(医療費助成など)に影響が出るケースもあるため、事前にケアマネジャーやファイナンシャルプランナー、市区町村の窓口など、専門家への相談をおすすめします。
その他の税制控除や資産運用の方法を見直す
家計を見直すうえで、意外と見落としがちなのが「使える控除制度」や「お金を増やす制度」です。
たとえば、生命保険や地震保険に加入しているなら、それだけで「保険料控除」の対象になることがあります。
年末調整や確定申告で申請すれば、税金の一部が戻ってくるかもしれません。
また、将来に向けた資産づくりには「NISA」や「iDeCo」の利用もおすすめです。
これらは投資や年金の積立に対する税金の優遇がある制度で、少額から始めることができるため、近年利用する人が増えています。
親の扶養についてよくある質問
親の扶養についてよくある質問に回答します。
親を税法上の扶養に入れるための条件は?
親を税法上の扶養に入れるための条件は下記のとおりです。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族・3親等内の姻族)である
- 納税者と生計を一にしている
- 親の年間合計所得金額が48万(給与のみの場合は給与収入が103万)円以下である
- 青色申告者の事業専従者として一度も給与の支払を受けていない、もしくは白色申告者の事業専従者でない
「生計を一にする」の判断基準は?
親を扶養に入れる際の手続きは?
親を扶養に入れる際は、税制上と社会保険上、それぞれに手続きが必要です。
ただし親が75歳以上である場合は社会保険上の扶養はできないため、税制上の手続きのみとなります。
子どもの年末調整時に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出するか、確定申告をして扶養していることを申告しましょう。
【一番おすすめ】親を扶養に入れて良いのか悩んでいる人が使うべき方法
扶養を活用して親と自分たち自身の生活を余裕のあるものにするためには、扶養の制度や条件についてしっかり理解し、自分達がどの立場に当てはまるのかを確認することが重要です。
特に、その上で保険料や医療費の負担額も考慮し、自分たちに最適な選択肢を選ぶここが必要になってきます。
とはいえ、その選択には制度の専門性やお金への正しい知識が必要であり、自分で全てを検討するのは正直難しいです。
そこで、そんな方におすすめなのがお金の専門家であるFPへの相談です。自分の家庭の状況を踏まえながら、生活費を確保するにあたって最適なプランをFPが共に検討してくれます。
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【別居・同居別】75歳以上の親を扶養に入れるデメリットや注意点まとめ
ここまで、75歳以上の親を扶養に入れる際の注意点について、「同居」か「別居」かでどう変わるのかを整理してきました。
結論として、同居であれば税制面のメリットがやや大きい一方で、介護保険料や医療費の自己負担が増えることがあり、別居であれば扶養控除額が下がるうえ、証明書類などの手続きも煩雑になるという点がポイントです。
また、どちらの場合でも75歳以上の親は社会保険上の扶養には入れないため、健康保険料の削減などは期待できません。
とはいえ、実際にどちらが有利かは「親の健康状態」や「世帯年収」「介護サービスの利用有無」などによって大きく変わります。 将来的な出費を見越したうえで、扶養に入れるかどうかを判断するには、制度を正しく理解し、自分たちの状況にあわせた判断が必要不可欠です。
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