
「iDeCoで月1万円って意味がないのでは...」
「こんな少額で老後資金は本当に貯まるの?」
と不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
- 実は、月1万円の積立でも長期的に運用すれば、830万円程度の資産を目指すことも可能です。
この記事では、iDeCoで月1万円の積み立てが「意味ない」とされる理由と、その誤解を正しながら実際のメリットを紹介します。
具体的なシミュレーションやiDeCo以外の資産形成方法との比較も紹介していくのでぜひ参考にしてください。
内容をまとめると

この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- iDeCoで月1万円の積立は意味ないと言われる理由4選
- 老後資金としては不十分
- 流動性リスクに対してリターンが少ない
- 税制優遇効果が限定的
- 手数料の影響が相対的に大きい
- iDeCoで月1万円積立をするのは意味ない?と感じる場合はFPの無料相談を活用しよう
- iDeCoで月1万円積立をするのは本当に意味ない?いくら増えるかシミュレーション
- 40年間積み立てた場合(25歳から運用開始)
- 30年間積み立てた場合(35歳から運用開始)
- 20年間積み立てた場合(45歳から運用開始)
- 10年間積み立てた場合(55歳から運用開始)
- iDeCoで月1万円積立するメリット
- 掛金が全額所得控除になる
- 運用益が非課税になる
- 運用資金の受取時も控除を受けられる
- 長期投資でリターンは大きくなる
- 【iDeCo以外】自分にピッタリの資産形成方法は?月1万円でできる方法とは?
- iDeCoで月1万円の積立をする際のポイント
- 自分の加入区分を確認する
- 60歳時点での希望貯蓄額を考える
- 現在の積立ペースでの想定貯蓄額を求める
- 定期的に積立プランを見直す
- 【まとめ】iDeCoで月1万円の積立は意味ないと言われる理由
iDeCoで月1万円の積立は意味ないと言われる理由4選
「iDeCoを月1万円で始めても意味がない」と言われる理由は以下のとおりです。
- 老後資金としては不十分
- 流動性制約に対してリターンが少ない
- 税制優遇効果が限定的
- 手数料の影響が相対的に大きい
この章では、これらの指摘が実際どうなのかを詳しく解説していきます。
老後資金としては不十分
老後の生活を安心して送るためには、公的年金だけでは不足する可能性が高く、iDeCoなどの私的年金での補完が必要ですが、月1万円の積立では十分な額を確保するのは困難とされています。
なぜなら、夫婦二人でゆとりある生活を送るには月に約38万円が必要(※)とされているからです。
しかし、公的年金の標準的な受給額(夫婦だけの無職世帯)は月に約23万円のため、差分の15万円をiDeCo等を活用して自己資金で準備する必要があります。
30年間運用しても、月1万円の積立では多くても830万円程度です。これを65歳から20年間で取り崩すと、月々約3.5万円の上乗せにしかなりません。
老後に必要と言われる金額と比較すると、豊かな老後生活を送るには物足りないと言えるでしょう。
流動性リスクに対してリターンが少ない
iDeCoは原則として60歳まで引き出せないため、非常に流動性の低い制度です。
流動性の低さに対して、月1万円の積立では得られる利益が限られるという見方もあります。
たとえば、急な病気や怪我・失業などで資金が必要になっても、iDeCoからは引き出せません。また、マイホーム購入や子どもの教育資金など、人生の大きなイベントにも使えないのです。
資金が長期間拘束されるリスクがある上に、投資成果によっては資産形成が期待通りに進まない場合もあるため、iDeCoを敬遠する方が一定数います。
税制優遇効果が限定的
iDeCoの大きな魅力の一つである税制優遇効果ですが、月1万円(年間12万円)の積立では、その恩恵が限定的になる場合があります。
特に所得が少ない方や特定の控除を受けている方にとっては、メリットを十分に感じられないでしょう。年収別の節税効果は以下のとおりです。
年収 | 所得税率 | 住民税率 | 年間節税額 |
---|---|---|---|
195万円以下 | 5% | 10% | 約1.8万円 |
330万円以下 | 10% | 10% | 約2.4万円 |
695万円以下 | 20% | 10% | 約3.6万円 |
※参照:確定申告書等作成コーナーよくある質問|国税庁 NATIONAL TAX AGENCY
表からも分かるとおり、年収が低い方は節税効果も小さくなります。たとえば、年収195万円以下の方では年間の節税額は約1.8万円です。
年収が低くてiDeCoの節税メリットが小さい場合は、NISAを運用する方が合理的なケースもあるため、慎重に検討する必要があります。
手数料の影響が相対的に大きい
iDeCoでは運用にあたり様々な手数料が発生します。そのため、積立金額が少ないと手数料が運用成果に与える影響が相対的に大きくなります。
iDeCoで発生する主な手数料は以下のとおりです。
手数料の種類 | 金額 | 頻度 |
---|---|---|
加入時手数料 | 2,829円 | 初回のみ |
国民年金基金連合会手数料 | 105円 | 毎月 |
事務委託先金融機関手数料 | 66円 | 毎月 |
金融機関の口座管理費用 | 0〜数百円 | 毎月(金融機関による) |
運用商品の信託報酬 | 資産額の0.1%〜1.0%程度 | 年率(商品による) |
月1万円の積立の場合、基本手数料だけで毎月171円(年間2,052円)発生します。
これは積立額の1.71%に相当し、金融機関によっては追加で口座管理費用がかかるケースもあります。
このように、積立金額が少ない場合は手数料の比率が高くなり、運用益を圧迫するのです。
iDeCoで月1万円積立をするのは意味ない?と感じる場合はFPの無料相談を活用しよう
iDeCoで月1万円積立をするのは意味ないと感じる場合は、専門家に相談することをおすすめします。
月1万円という金額は一見少なく感じるかもしれませんが、実際には税制優遇効果や複利効果により、長期的に大きなメリットをもたらす可能性があります。
FPに相談することで、年収状況や年齢、投資目的を踏まえて、あなたに最適な拠出額をアドバイスしてくれます。
また、投資初心者が悩みがちな金融機関の選び方や運用商品の選定方法、税制メリットを最大化する掛金設定まで、専門家ならではの実践的なアドバイスが受けられます。
専門家に相談して、リスクを抑えた上で最大限活用できる運用方法を見つけましょう。


iDeCoで月1万円積立をするのは本当に意味ない?いくら増えるかシミュレーション
ここでは、iDeCoに「月1万円で投資することで、どれほどの老後資金を準備できるのか」を以下の条件でシミュレーションしながら解説します。
- 40年間積み立てた場合(25歳から運用開始)
- 30年間積み立てた場合(35歳から運用開始)
- 20年間積み立てた場合(45歳から運用開始)
- 10年間積み立てた場合(55歳から運用開始)
※シミュレーションは過去のデータに基づいた結果であり、将来の収益を保証するものではありません。
40年間積み立てた場合(25歳から運用開始)
iDeCoで月1万円を40年間積み立てた場合のシミュレーションは下記のとおりです。
iDeCoで月1万円を40年間積み立てた場合、運用利回り3%で約446万円の運用益が期待できます。
40年という長期間の複利効果により、元本480万円に対して大幅な増加が見込めます。
30年間積み立てた場合(35歳から運用開始)

iDeCoで月1万円を30年間積み立てた場合、運用利回り3%で約582万円の資産形成が期待できます。
元本360万円に対して、3%運用でも約222万円の運用益が期待できます。
20年間積み立てた場合(45歳から運用開始)

iDeCoで月1万円を20年間積み立てた場合、運用利回り3%で約88万円の運用益が期待できます。
元本240万円に対して、運用期間が短くなると複利効果は限定的になりますが、それでも一定の資産増加は見込めます。
10年間積み立てた場合(55歳から運用開始)

iDeCoで月1万円を10年間積み立てた場合、運用利回り3%で約140万円の資産形成が期待できます。
元本120万円に対して、運用期間が短いため複利効果は小さくなりますが、それでも元本を上回る結果となります。
55歳からでも節税効果と合わせて考えれば、一定のメリットがあると言えるでしょう。
iDeCoで月1万円積立するメリット
iDeCoは月1万円という少額からでも始められる老後資金形成の強い味方です。iDeCoのメリットを理解し、うまく活用すれば効率的に資産を増やせます。
iDeCoを活用し、月1万円積立するメリットは以下のとおりです。
- 掛金が全額所得控除になる
- 運用益が非課税になる
- 運用資金の受取時も控除を受けられる
- 長期投資でリターンは大きくなる
月1万円でiDeCoを始める具体的なメリットについて、詳しく見ていきましょう。
掛金が全額所得控除になる
所得税や住民税は、「課税所得」に所定の税率をかけて算出します。
つまり、課税所得が少なければ少ないほど、納める税金は少なくすみます。
課税所得の計算式は以下の通りです。
- 課税所得=給与所得ー所得控除
給与所得から所得控除として掛金を差し引くことで、課税所得が減少し、納めるべき所得税と住民税の税額が減少するのです。
運用益が非課税になる
iDeCoで月1万円の積立は意味があると言える理由の2つ目は「運用益が非課税」となる点です。
通常、金融商品を運用すると、運用益は20.315%が課税されます。
しかし、iDeCoで運用すれば非課税になります。
たとえば、運用で10万円の利益が出た場合、iDeCoに加入していなければ、20,315円を納税しなければならないので、最終的に手に入るのは79,685円です。
一方、iDeCoに加入していれば、運用益10万円を全て手に入れられます。
運用資金の受取時も控除を受けられる
iDeCoでの運用資産を受け取る際は「所得」として課税対象となりますが、優遇措置があります。
運用資産の受取方法は以下の2種類です。
- 年金として分割で受け取る
- 一時金として一括で受け取る
年金として分割で受け取る場合、「公的年金等控除」が適応されます。
一時金として一括で受け取る場合、勤続年数に応じた「退職所得控除」が適応されます。
それぞれ計算方法が異なりますが、いずれの受け取り方でも税制優遇を受けられる点は変わりません。
長期投資でリターンは大きくなる
iDeCoで月1万円の積立は意味があると言える理由の4つ目は「長期投資でリターンは大きくなる」点です。
「投資額が少ないとリターンも同様に少ないのでは?」と考える方は多いです。
しかし、小額投資だとしても、長期投資によって多くのリターンを得られるので、意味があると言えます。
また、月1万円の積立であっても、長期投資をすることで、安定して大きなリターンを得られる可能性が高まります。
【iDeCo以外】自分にピッタリの資産形成方法は?月1万円でできる方法とは?
iDeCo以外にも月1万円から始められる資産形成方法はいくつかあり、自分のライフプランや目的に合った方法を選ぶことが大切です。
主な資産形成方法は以下の通りです。
資産運用方法 | こんな方におすすめ | 主なメリット | 主なデメリット |
---|---|---|---|
新NISA | 柔軟に資金を活用したい方 60歳前に資金が必要になる可能性がある方 | 運用益が非課税 いつでも引き出し可能 投資可能商品が豊富 | 所得控除はない 自己責任で商品選択が必要 |
個人年金保険 | 安全性を重視する方 老後の収入を定期的に得たい方 | 元本割れリスクが低い 生命保険料控除を受けられる | 運用利回りが低い 途中解約すると元本割れの可能性 |
投資信託 | 自由に資金を運用したい方 積極的に資産を増やしたい方 | いつでも売却可能 少額から始められる 商品選択の幅が広い | 運用益に約20%の税金がかかる 元本保証がない |
資産形成にはそれぞれ特徴があり、最適な方法を選ぶにはメリットとデメリットの理解が欠かせません。
iDeCoで月1万円の積立をする際のポイント
ここからは、iDeCoで月1万円の積立をする際のポイントを解説します。
iDeCoに加入するだけで十分に節税効果が期待できますが、可能な限りで利益を最大化させるためにも、ポイントを意識して運用しましょう。
積立する際のポイントは以下の通りです。
- 自分の加入区分を確認する
- 60歳時点での希望貯蓄額を考える
- 現在の積立ペースでの想定貯蓄額を求める
- 定期的に積立プランを見直す
必要な老後資金額をある程度定めながらも、自由に動かせるキャッシュを確保しておくことが大切です。
自分の加入区分を確認する
iDeCoで月1万円の積立をする際のポイントの1つ目は「自分の加入区分を確認する」ことです。
iDeCoは、加入者の職業や資格によって月ごとに拠出できる限度額が決まっています。
限度額の分類と条件は以下の通りです。
- 第一号被保険者(自営業)…6.8万円
- 第二号被保険者(会社員・公務員)…1.2万円~2.3万円
- 第三号被保険者(専業主婦)…2.3万円
退職金がなく、老後資金を準備する必要性が高い自営業者は、他の職業と比べて限度額が多めに定められています。
60歳時点での希望貯蓄額を考える
iDeCoで月1万円の積立をする際のポイントの2つ目は「60歳時点での希望貯蓄額を考える」ことです。
60歳の時点でどれぐらいの老後資金を準備したいかを考えてみましょう。
ポイントは、iDeCoだけでなく他の金融商品(預金など)と組み合わせて、どれだけiDeCoで資金を準備しておきたいのかを設定することです。
このように、60歳の時点でどれぐらいの老後資金を準備したいかを考えることで月々の拠出額が明確になります。
現在の積立ペースでの想定貯蓄額を求める
iDeCoで月1万円の積立をする際のポイントの3つ目は「現在の積立ペースでの想定貯蓄額を求める」ことです。
人生にはさまざまなライフイベントがあることに加え、急な出費でお金が必要になることもあります。
そこで、手元にどれだけのキャッシュを残しておきたいかを考えてから掛金の金額を決める方法があります。
1か月にどれほど拠出できるかを考えて、老後資金形成の準備を始めましょう。
定期的に積立プランを見直す
iDeCoで月1万円の積立をする際のポイントの4つ目は「定期的に積立プランを見直す」ことです。
iDeCoの掛金金額は、収入やライフスタイルの変化に応じて、定期的に積立プランを見直しましょう。
iDeCoの開始当初は、少なめの金額でスタートするのがおすすめです。また、年齢を重ねて収入が増加したタイミングで、掛金の増額を検討するのも手です。
ただし、拠出額を変更できるのは「1年に1回」である点に注意が必要です。
【まとめ】iDeCoで月1万円の積立は意味ないと言われる理由
この記事ではiDeCoで月1万円の積立は意味ないと言われる理由について詳しく解説してきました。
iDeCoの月1万円積立が「意味ない」と言われる理由は、老後資金の準備額として不十分であり、手数料負担の割合が高くなってしまうからです。
しかし、資産形成の入門として少額から始めることには価値があります。全額所得控除による節税効果は金額に関係なく適用され、運用益非課税の恩恵も受けられます。また、投資経験を積みながら段階的に増額していくことも可能です。
iDeCoは制度が複雑で判断に迷うことが多いため、専門家への相談をおすすめします。マネーキャリアでは3,500人以上のFPが在籍しており、何度でも無料でiDeCoの詳細な仕組みや節税シミュレーションについて相談できます。
あなたの収入や将来設計に応じて、月1万円から始めるべきか、それとも他の資産形成方法が適しているかを、経験豊富な専門家と一緒に検討してみてはいかがでしょうか。

「老後資金としては不十分」「流動性リスクに対してリターンが少ない」「税制優遇効果が限定的」「手数料の影響が相対的に大きい」