

この記事の監修者 井村 那奈 フィナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー。1989年生まれ。大学卒業後、金融機関にて資産形成の相談業務に従事。投資信託や債券・保険・相続・信託等幅広い販売経験を武器に、より多くのお客様の「お金のかかりつけ医を目指したい」との思いから2022年に株式会社Wizleapに参画。
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この記事の目次
- 年金カットを避ける3つの働き方
- 自営業や個人事業主
- 短時間のパート勤務
- 定年後再雇用
- 年金カットを避けながら働ける?自分に合った方法を知りたい人はFPに相談を
- 【みんなはどうしてる?】年金カットを避けるための対策をアンケート
- どのような働き方をしていますか?その理由は?
- 働くうえで「年金カット」を意識していますか?
- 年金カットを避けるための対策を取っていますか?
- 年金カットを避ける働き方を目指す際に知っておきたいポイント
- 老齢基礎年金は減額されない
- 厚生年金に加入するメリットも考慮する
- 制度改正で「壁」が見直される可能性も
- 年金カットを避ける働き方戦略3選
- 厚生年金の加入による損得を見極める
- 制度改正を見据えて働き方を選ぶ
- 年金に影響を与えない収入経路を得る
- 年金カットを避ける働き方をマネーキャリアと一緒に考えてみませんか?
- 【まとめ】年金カットを避ける働き方を選ぶには制度理解と対策が必須
年金カットを避ける3つの働き方
在職老齢年金制度では、年金を受け取りながら働くことが可能ですが、一定の収入を超えると年金の一部または全部が支給停止される仕組みがあります。
具体的には、給与と年金の合計が月51万円を超えた分について支給停止が発生します※。「生活費のために働きたいけれど、年金が減るのは避けたい」と考える人も多いでしょう。
しかし、働き方を工夫すると、年金を減らさずに収入を得ることも可能です。ここでは、年金カットを回避しつつ収入を確保するための具体的な方法を3つ紹介します。
- 自営業や個人事業主
- 短時間のパート勤務
- 定年後再雇用
自営業や個人事業主
自営業や個人事業主として働く場合、加入するのは厚生年金ではなく国民年金です。そのため、給与と年金の合計額に応じて支給額が減額される「在職老齢年金」の対象にはなりません。
自営業には、前職での経験や専門性を活かしてコンサルタントやエンジニアとして業務委託契約を結ぶなど、自分のペースで収入を得る方法も多数あります。人生100年時代と呼ばれる昨今、60代での起業も珍しいことではなくなり、これまで培った経験や人脈を武器に成功を収めるシニアも増加しています。
短時間のパート勤務
週に2~3日、1日4~5時間程度の短時間パート勤務は、収入を調整しながら無理なく働けるため、60代の方に人気があります。月収が比較的低く抑えられることから、年金の支給停止ラインである月額約51万円(2025年度)※1を超える心配が少なく、年金が満額で受給できるのがメリットです。
例えば「週3日、1日5時間勤務で月8万円程度」といった働き方なら、年金だけでは足りない生活費をパート収入で補いつつ、年金を満額受け取れるケースもよく見られます。
そのため、コンビニエンスストアやスーパー、清掃業務、警備、軽作業、学校給食補助など、60代でも採用されやすい職種でパート勤務をしながら、不足する生活費を補っている方も少なくありません。
定年後再雇用
60歳以降も同じ職場で働き続けられる「再雇用制度」は、多くの企業で導入されています。働き慣れた環境で収入を得られることが大きな魅力です。定年退職後に嘱託社員やパートタイマーとして再雇用され、雇用契約を更新しながら65歳まで働き続けるケースが一般的です。
再雇用後の給与は現役時代の7〜8割以下になることが多いため、年金の支給停止ライン(月約51万円)を超える心配はほとんどありません※1。
また、元の職場であれば勤務時間や仕事内容について希望が通りやすく、自分に合ったペースで無理なく働けるでしょう。
60歳時点の賃金より75%未満に低下した場合、雇用保険から高年齢雇用継続給付金を受給できる可能性があります。この給付金は、賃金低下分の一定割合が毎月支給される制度で、現在は最大で15%が支給されています。
年金カットを避けながら働ける?自分に合った方法を知りたい人はFPに相談を

多くの人が定年後も働き続けたいと考える一方で、年金が減額されることへの不安を抱えています。
現行の制度では、月々の収入(給与と年金の合計)が約51万円を超えると、その超えた分に応じて年金の一部または全額が支給停止となるのです※。ただし、年金カットを回避するための働き方や対策は人それぞれです。
毎月の収入を調整して年金の減額を避ける方法や、年金の受給開始時期を変更する方法、あるいは別の資産を活用して収入を補う方法など、状況に応じて最適な選択肢が異なります。
自分に合った働き方や老後の資金計画を具体的に知りたい場合は、プロであるFPに相談するのが一番の近道です。FP相談であれば、自分に合った働き方や年金の受け取り方がわかります。

【みんなはどうしてる?】年金カットを避けるための対策をアンケート
年金を受給しながら働く人にとって気になるのが「年金カット」です。実際にどれくらいの人が年金カットを意識し、どのような対策を取っているのでしょうか。
他の人がどのような働き方を選んでいるか、どのくらい年金カットを気にしているかを知ることで、自分にとって適切な働き方や対策を見つけるヒントになります。
そこで、実際に年金を受け取りながら働いている人たちのリアルな声をアンケート形式でまとめました。体験談をもとに、自身の年金カット対策の参考にしてみてください。
どのような働き方をしていますか?その理由は?

年金カットを避けるため、働き方を工夫する人は少なくありません。フルタイムではなくパートやアルバイト勤務を選ぶ人、思い切って自営業に転身した人、定年後の再雇用を活用して収入を調整する人など、選択肢はさまざまです。
実際に働きながら年金を受け取っている人は、どのような働き方をしているのでしょうか。それぞれの働き方を選んだ理由やリアルな体験談を集めました。
これから年金を受け取りつつ働きたい人や、現在の働き方を見直したい人は、ぜひ参考にしてください。

60代女性
無理のないパート勤務が私には合っている
以前は正社員としてフルタイム勤務でしたが、定年後は体力面や年金の支給停止を気にしてパートに切り替えました。年金が満額もらえる範囲内で収入を調整できるので、月に10日程度の勤務で生活費の一部を補えています。

60代男性
自営業なら年金を減らさずに働ける
定年退職後は趣味を活かして個人事業主になりました。サラリーマン時代とは違い、厚生年金に加入しない自営業の場合は年金をカットされる心配もありませんし、自分のペースで無理なく働けます。年齢を重ねるほど自由に働けるメリットを実感しています。

60代女性
FPへの相談で安心できる働き方を選べた
年金を受け取りながら働きたかったのですが、制度が複雑で不安がありました。そこでFPに相談したところ、正社員では年金カットのリスクが高いため、収入調整しやすい短時間勤務やパート勤務が良いとアドバイスを受けました。
口コミの結果を見ると、多くの人が年金カットを回避するため、自分に合った働き方を工夫していることがわかりました。
特に多かったのはパートやアルバイト勤務で、年金の支給停止ラインを意識しながら収入を調整しているケースが目立ちました。さらに、口コミの中には、年金制度が複雑で不安に感じたため専門家に相談し、自分に最適な働き方を見つけられたという声もありました。
働くうえで「年金カット」を意識していますか?

アンケート結果から、多くの人が年金を受け取りながら働く際に「年金カット」を気にしていることが分かりました。
特に目立ったのは「なんとなく気にしている」「気にせず働ける範囲で働いている」という声です。
具体的にいくらまで働けば年金が減らないかを明確に理解せず、漠然とした不安を抱えたまま働いている人が多いと考えられます。
さらに、在職老齢年金制度そのものを知らなかったという回答もあり、制度の周知や理解が十分でない現状も浮き彫りになりました。
年金カットを避けるための対策を取っていますか?

年金カットを避けるために具体的な対策を取っている人は、どのくらいいるのでしょうか。制度が複雑で分かりにくいため「何をすればよいのか分からないまま働いている」という方も多いかもしれません。
しかし、事前にきちんと対策を立てておけば、年金カットを気にせず安心して働けるようになります。そこで今回、実際に年金を受け取りながら働いている人が、どのような対策を取っているのかアンケート調査を実施しました。
実際の取り組みをぜひ参考にして、自分に合った働き方を見つけてみてください。

60代女性
年金カットが怖いので収入を調整している
パートの勤務時間を調整して、月々の収入が年金支給停止ラインを超えないように気をつけています。最初は制度が複雑で不安でしたが、今はある程度慣れてきました。

60代男性
特に何も気にせず働いている
現在は自営業で年金を受け取りながら仕事をしています。年金カットについては特に意識せず、自分が好きなように働いて収入を得ています。

60代女性
FPに相談して具体的な対策を取った
年金カットが不安でFPに相談しました。自分に最適な働き方をアドバイスしてもらい、働く時間や収入を調整する方法を具体的に教えてもらいました。
口コミ結果を見ると、年金カットを避けるために積極的に対策をしている人と、特に何も意識していない人とに分かれていることがわかりました。
「制度が複雑で何をすればいいか分からない」という声も多く、不安を感じている方も少なくありません。実際に専門家へ相談した人からは「具体的なアドバイスをもらったおかげで不安が解消され、自信を持って働けるようになった」という声が多数ありました。
年金カットを避ける働き方を目指す際に知っておきたいポイント

年金カットを避けるためには、制度の内容や働き方ごとのメリット・注意点を正しく理解しておくことが重要です。
そこで、年金カットを回避しながら働くために押さえておくべきポイントを整理しました。
- 老齢基礎年金は減額されない
- 厚生年金に加入するメリットも考慮する
- 制度改正で「壁」が見直される可能性も
老齢基礎年金は減額されない
在職老齢年金制度において、支給停止や減額の対象となるのは「老齢厚生年金」の部分です。老齢基礎年金は働き方や収入の多さに関わらず、常に満額支給されます。
例えば、国民年金に40年間加入した場合、老齢基礎年金は満額で月約6.9万円(年額約83万円)となります※1。基礎年金の支給額は、定年後に働いて収入が増えたとしても減額されることはありません。
一部の人は「働いたら年金がすべて減額される」と誤解していますが、実際は基礎年金部分が必ず確保されています。この基礎年金を土台として、自分の働き方や収入のバランスを考えながら毎月の資金計画を立てることが大切です。

厚生年金に加入するメリットも考慮する
65歳以上でも厚生年金に加入して働き続けると、将来的に受け取れる年金額を増やすことができます。65歳から70歳未満で働いている人の場合、厚生年金への加入期間に応じて毎年1回年金額が再計算され、受給額が増える仕組みがあります。
また、厚生年金加入と同時に会社の健康保険にも加入できるため、国民健康保険にはない手厚い保障を受けられる点もメリットです。
例えば、病気やケガで仕事を休んだ場合でも、健康保険から給料のおよそ3分の2が最長1年半支給される「傷病手当金」を受給できます※。さらに、社会保険料が会社と本人の折半となるため、個人の負担が軽減されることも大きな利点です。
制度改正で「壁」が見直される可能性も
65歳以上の在職老齢年金制度では、月の収入が基準額の51万円を超えた分から年金が減額されますが、この基準額は2026年度には月62万円まで引き上げられる予定です※。
60~64歳が対象となる在職老齢年金制度(低在老)でも、基準額が従来の28万円から47万円へと引き上げられた経緯があります。
このように、年金カットという「壁」は段階的に引き上げられており、高齢者がより長く安心して働けるように制度が見直されています。今後もさらなる制度改正が見込まれているため、最新の情報を把握し、自分のライフプランに適した働き方を検討することが重要です。
年金カットを避ける働き方戦略3選

年金を受け取りながら働く際、多くの人が気になるのが在職老齢年金制度の「51万円の壁」です。現在の制度では、給与と年金を合わせた月収が一定額を超えると、超過分の半額が年金から支給停止されます。
この仕組みから「働けば年金が減って損をする」と感じる方も少なくありません。しかし、働き方を工夫すれば年金の減額を避けることも十分に可能です。
ここでは、年金カットを回避しながら働くための3つのポイントをご紹介します。
- 厚生年金の加入による損得を見極める
- 制度改正を見据えて働き方を選ぶ
- 年金に影響を与えない収入経路を得る
厚生年金の加入による損得を見極める
厚生年金に加入する働き方を選ぶと「在職老齢年金」の支給停止の対象となります。
一方で、厚生年金に加入し続けて保険料を納めれば、その期間が将来の年金額に上乗せされるというメリットもあります。65歳以降は毎年1回「在職定時改定」によって前年までの加入実績に応じて年金額が見直されるため、働き続けることで年金額を着実に増やすことも可能です※。
さらに、厚生年金に加入していると、遺族年金や障害年金などの保障も充実し、万一のときにもしっかり備えられます。
厚生年金に加入するメリットは大きく、現在の収入状況やライフプラン、受給中の年金額などとのバランスを見ながら、冷静に損得を判断することが重要です。
制度改正を見据えて働き方を選ぶ
現在は「51万円の壁」によって、働き方によっては損をしてしまうケースがあります。しかし、制度改正によって条件が変われば、その損得が逆転する可能性があります。
新しい基準額が適用されると、新たに約20万人の高齢者が年金を全額受け取れるようになるとされています※1。
例えば、現行制度では月収55万円のシニア社員は5万円の超過分の半額である約2万5千円が年金からカットされていますが※2、基準額62万円(名目賃金ベース)になれば同じ収入で年金カットは生じなくなります。
このように、今は不利に見える働き方でも、制度が変われば有利に働くケースが出てくるのです。パート勤務でも、条件次第でフルタイムに戻って年金を減らさず収入を増やせる可能性もあります。
年金に影響を与えない収入経路を得る
在職老齢年金による年金カットは、厚生年金に加入して働いた際に得る給与や賞与が対象となります。そのため、厚生年金に加入しない方法で収入を得ることは、年金の減額を避けつつ、収入を増やすための効果的な対策となります。
不動産投資から得る家賃収入や株式の配当金、自営業やフリーランスとして得る事業収入、副業による収入などです。
厚生年金への加入が伴わない形での収入は、在職老齢年金の支給停止額を計算する際の対象外です。こうした収入源を確保できれば、年金カットを気にして勤務先の収入を抑えている場合でも、十分な生活水準を維持したり、余裕をもって老後の資金計画を立てたりすることが可能になります。
年金カットを避ける働き方をマネーキャリアと一緒に考えてみませんか?

働くなら損はしたくないという気持ちは当然ですが、年金制度は複雑で思わぬ落とし穴が潜んでいます。月額約50万円を超える収入がある場合、在職老齢年金の仕組みによって年金が減額(年金カット)される可能性があります※1。
このような仕組みを知らずに働き続けると、気づかないうちに損をしてしまうかもしれません。
年金カットを回避しながら自分に合った働き方を見つけるには、マネーキャリアでのFP相談が最適です。
マネーキャリアは、累計相談実績10万件以上、利用者満足度約98.6%を誇る信頼度抜群のお金の相談サービスです。
【まとめ】年金カットを避ける働き方を選ぶには制度理解と対策が必須
年金カットを避けるためには「働かない」という選択ではなく「どう働くか」をしっかりと考えることが重要です。給与と年金額の合計が一定額を超えると年金が減額または停止されるため、制度を理解し、自分にとって損の少ない働き方を選ぶ必要があります。
年金制度は複雑で変化も多いため、最新情報を常に収集し、自分の働き方を定期的に見直すことが求められます。
専門家に相談することで、より的確に自分に合った戦略を見つけられるでしょう。安心して老後を迎えるために、専門家のアドバイスをぜひ活用してみましょう。

海外の例にはなりますが、マクドナルドの創業者レイ・クロックやケンタッキーフライドチキンの創業者カーネル・サンダースも、50代・60代で起業し、大きな成功を掴んだことで有名です。
「働き続けたいけれど、年金は減らされたくない」という人にとって、自営業は制度の制約を受けずに自由に収入を確保できるため、有力な選択肢となるでしょう。