内容をまとめると
- 勤続年数が5年以下かつ退職金300万円以上の役員は「退職所得の金額= (退職した際に受け取った収入総額-退職所得控除額) ×1/2」で計算される控除が適用できない。
- 役員退職金は「退職所得控除」「1/2課税」「所得税の分離課税」の税制優遇が活用できる。
- 高額な役員退職金が支払えず裁判に発展するケースを避けるために、法人生命保険を活用する企業も多い。
- 役員退職金の捻出は決算や資金繰りに大きな影響を及ぼすので、「丸紅グループが運営するマネーキャリア」のような法人保険に特化した専門家による無料相談サービスを使う企業も増えている。
この記事の目次
- 役員退職金の支払いにかかる税金と計算方法
- 累進緩和措置の見直しに伴う税制改正について
- 役員退職金の税金控除額をシミュレーション
- 役員退職金で利用できる3つの税制優遇とは
- 退職所得控除の活用
- 1/2課税の活用
- 所得税の分離課税の活用
- 役員退職金を損金算入してより節税する方法とは
- 役員退職金の上限額を把握する
- 役員退職金を損金算入するために必要な手順
- 法人生命保険の活用で一時的な課税繰り延べができる
- 役員退職金の支払いを生命保険で用意する企業が多い理由
- 赤字決算にならずに多額の資金を用意できる
- 解約返戻金を事業資金に利用できる
- 福利厚生として同時に活用できる
- 備えるべき事業リスクと対策が無料で簡単にわかる方法
- 役員退職金を含む事業リスクに備える対策に:マネーキャリア(丸紅グループ)
- 法人保険の活用事例集
- 役員退職金の支払いにかかる税金と計算方法のまとめ

役員退職金の支払いにかかる税金と計算方法
以下では、役員退職金の支払いにかかる税金と計算方法について解説します。
役員退職金は大幅な税制優遇が受けられるものの、平成25年の税制改正により一部役員が税制優遇を受けられなくなりました。退職金の実質受取金額を多くするために、税金控除の要件を理解する必要があります。
累進緩和措置の見直しに伴う税制改正について
役員退職金の課税対象額は、累進緩和措置により、退職金総額から退職所得控除額を引いた残額の半分(1/2)となっています。
累進緩和措置の見直しに伴う税制改正に伴い、現在は勤続年数が5年以下の役員の場合、役員退職金の税率に関して累進緩和措置が適用できなくなりました。
その背景として、短期間で転職を繰り返して多額の退職金をもらう“天下り”が社会問題化したため、平成25年(2013年)、国税庁が「租税特別措置法等の一部を改正する法律」において、役員退職金の税制改正を施行しました。
勤続年数5年以下かつ退職金が300万円を超える場合には、「退職所得の金額= (退職した際に受け取った収入総額-退職所得控除額) ×1/2」で計算される控除は適用できません。
役員退職金の税金控除額をシミュレーション
今回は、役員退職金を計算するときに一般的な功績倍率法を用いて役員の適正退職金を算出したあと、役員退職金とその控除額をシミュレーションします。
なお、以下のシミュレーションは役員退職所得の税金控除が適用される、勤務年数が5年以上のモデルを用いたものです。
▼役員退職金額(税金控除額)
(左右にスクロールできます)
| 在任年数/役位 | 社長 | 専務 | 常務 | 平取締役 |
|---|---|---|---|---|
| 5年 | 6,975万円(1,075万円) | 3,335万円(363万円) | 2,340万円(199万円) | 1,580万円(95万円) |
| 7年 | 9,765万円(1,654万円) | 4,669万円(598万円) | 3,276万円(340万円) | 2,212万円(165万円) |
| 9年 | 12,555万円(2,264万円) | 6,003万円(849万円) | 4,212万円(490万円) | 2,844万円(256万円) |
| 11年 | 15,345万円(2,874万円) | 7,337万円(1,099万円) | 5,148万円(662万円) | 3,476万円(347万円) |
※1万円以下は切り捨て
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前提:役員退職金を算出する際に用いる功績倍率は、昭和55年に国が示した「社長3.0、専務2.4、常務2.2、平取締役1.8、監査役1.6」をベースとする。
また、 最終報酬月額は、労政時報「労務行政研究所調査2023」の平均金額を参照とし、「社長465万円、専務278万円、常務213万円、平取締役176万円」とする。
1. 退職所得控除の計算
勤続年数が20年以下の場合は「40万円×勤続年数(※算出額が80万円に満たない場合は80万円)」、勤続年数が20年超の場合は「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」
2. 課税退職所得金額の計算
「(退職金-退職所得控除額)×1/2」
3. 課税所得に対する税率と控除額の計算
| 課税退職所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円~194.9万円 | 5% | 0円 |
| 195万円~329.9万円 | 10% | 9.75万円 |
| 330万円~694.9万円 | 20% | 42.75万円 |
| 695万円~899.9万円 | 23% | 63.6万円 |
| 900万円~1,799.9万円 | 33% | 153.6万円 |
| 1,800万円~3,999.9万円 | 40% | 279.6万円 |
| 4,000万円以上 | 45% | 479.6万円 |
4. 所得税額の計算
「課税退職所得金額×所得税率-控除額」
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役員退職金で利用できる3つの税制優遇とは
以下では、役員退職金で利用できる3つの税制優遇について解説します。優遇制度には「退職所得控除」「1/2課税」「所得税の分離課税」があります。
役員退職金で活用できる税制優遇の計算は複雑ですが、退職金の税制優遇を活用すれば、課税額が大幅に減額できます。
たとえば、25年間勤続した役員が1億円の退職金を受け取るとき、「退職所得控除」「1/2課税」を利用しないと4,020万円が課税され、実質受取金額は5,980万円ですが、税制優遇を活用すると課税分の1,955万円が引かれ、実質受取金額は8,045万円となります。
退職所得控除の活用
▼退職所得控除額の計算方法
| 勤続年数 | 退職所得控除額の計算方法 |
|---|---|
| 20年まで | 40万円 × 勤続年数(80万円未満の場合は80万円) |
| 21年以降 | 70万円 × 勤続年数 |
たとえば、25年勤続した役員が退職した場合、「(40万円×就任から20年間=800万円)+(70万円×5年間=350万円)=1,150万円」まで税金がかかりません。
1/2課税の活用
退職金から退職所得控除を引いた半額が非課税になります。
▼ 1/2課税の計算方法
退職金額ー退職所得控除額×1/2
たとえば、25年勤続した役員が1億円の退職金を受け取った場合、1/2課税の「(1億円ー1,150万円)×1/2=4,425万円」に退職所得控除の「1,150万円」を加算した、合計「5,575万円」が非課税になります。
所得税の分離課税の活用
退職金を受け取っても、退職した年度の役員報酬と退職金は合算されない「所得税の分離課税」を活用できるので、役員報酬にかかる所得税率は上がりません。
▼所得税率と控除額の早見表
| 課税退職所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円~194.9万円 | 5% | 0円 |
| 195万円~329.9万円 | 10% | 9.75万円 |
| 330万円~694.9万円 | 20% | 42.75万円 |
| 695万円~899.9万円 | 23% | 63.6万円 |
| 900万円~1,799.9万円 | 33% | 153.6万円 |
| 1,800万円~3,999.9万円 | 40% | 279.6万円 |
| 4,000万円以上 | 45% | 479.6万円 |
たとえば、25年勤続した役員が1億円の退職金を受け取った場合、所得税と住民税が課税されるのは退職金のうち4,425万円です。
▼所得税の計算方法
所得税=課税される退職金×所得税率ー税額控除
▼住民税の計算方法
住民税=課税される退職金×10%
課税されるの退職金から所得税と住民税を引くと「1億円ー1,955万円=8,045万円」となり、実質の退職金受取金額は8,045万円です。
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役員退職金を損金算入してより節税する方法とは
役員退職金の上限額を把握する
役員退職金を損金算入するために必要な手順
以下では、役員退職金を損金算入するために必要な手順を解説します。
役員退職金を損金算入するためには、定款で定めるかもしくは株主総会の決議が必要です。役員退職慰労金規程がある企業では、取締役会に支給金額および支給方法を一任するのが一般的です。役員退職慰労金規程がない場合は、退任する役員ごとに金額を決定します。
役員退職が決まったら、役員退職慰労金規程もしくは功績倍率などを用いて退職金の支給額を決定したあと、「いつまでにどの支払い方式で支払うか」を決定します。
退職金を役員に支給したのちに、支給した日の翌月10日までに源泉所得税・住民税を納付します。さらに、役員退職後1ヶ月以内に退職所得の源泉徴収票の交付と提出が必要です。
法人生命保険の活用で一時的な課税繰り延べができる
役員退職金を準備する際に、解約返戻金がある法人契約の生命保険を活用することで、退職金積立金の一時的な課税繰り延べができます。
会社の預金を退職金として積み立てておくと、資金流動性が高く計画的に多額の資金を準備できないこともあります。しかし、生命保険に積み立てることで役員の死亡などに備えながら退職金を準備できます。
法人契約の生命保険は一部もしくは全額損金算入できるので、保険料支払い時には一時的な課税繰り延べとして決算対策に役立ちます。
しかし、実際に解約返戻金を利用して役員に退職金を支払う際は課税対象なので、あくまで一時的な課税繰り延べである点に注意です。
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役員退職金の支払いを生命保険で用意する企業が多い理由
赤字決算にならずに多額の資金を用意できる
役員退職金の支払いを法人契約の生命保険で準備することで、赤字決算にならずに多額の資金を用意できます。
たとえば、年に1,000万円程度の営業利益を出している会社が、2,500万円の退職金を一括で支払う場合、その年度の赤字は1,500万円です。株主に配当金を支払う必要があるため赤字決算にできない場合、生命保険で準備すると以下のような対策がとれます。
<法人契約の保険加入例>
保険料:年間200万円
損金割合:30%
10年後の累計保険料:2,000万円
10年後の解約返戻金:1,900万円(解約返戻率:95%)
年間200万円の保険料を30%損金にすると年940万円(1,000万円 - 60万円)の営業利益となり、退職金が支払われる10年後は営業利益年間1,000万円に解約返戻金1,900万円がプラスされ、営業利益と保険解約による雑収入の合計は2,900万円となります。
ここから2,500万円の役員退職金を支払っても、その年度の決算では赤字になりません。
解約返戻金を事業資金に利用できる
役員退職金の準備を目的として生命保険の積み立てをしていても、経営に万一があったときは、保険の解約返戻金や契約者貸付を、事業資金などの用途に転用できます。
役員退職金の積み立てを目的として法人契約の生命保険に加入しても、その解約返戻金や契約者貸付の用途は、役員退職金の補充に限定されません。
つまり、役員退職金積立途中に貸倒れや営業損失などが起きた場合、資金の補てんとして解約返戻金や契約者貸付を活用できます。
また、解約返戻金受取時の損金算入割合は最高解約返戻率と支払期間によって異なるため、受取解約返戻金に対して支払う税金がいくらになるかは都度確認が必要です。
▼定期保険の支払い保険料の損金算入
(左右にスクロールできます)
| 最高解約返戻率 | 資産計上期間 | 資産計上額 | 取り崩し期間※1 |
|---|---|---|---|
| 50%以下 | 全額損金算入 | 全額損金算入 | 全額損金算入 |
| 50超‐70%※2 | 保険期間の当初40%の期間 | 支払保険料×40% (支払保険料×60%は損金算入) | 保険期間の75%相当経過後、 保険期間終了日までの期間で 均等に取り崩して損金算入 |
| 70超‐85% | 保険期間の当初40%の期間 | 支払保険料×60% (支払保険料×40%は損金算入) | 保険期間の75%相当経過後、 保険期間終了日までの期間で 均等に取り崩して損金算入 |
| 85%超 | ①保険期間の開始 | 保険期間開始日から 10年経過日までは、 保険料×最高解約返戻率×90%を資産計上 11年目以降は、 支払保険料×最高解約返戻率×70%を 資産計上 (残りの割合は損金として算入) | 解約返戻金が最高金額に なったあと、保険期間終了日 までの期間で均等に取り崩し |
※1 取り崩しとは、残りの保険契約期間の年数に応じて、均等に分けることを指す。
※2 解約返戻率が50%超~70%以下で、なおかつ被保険者1人当たりの年換算保険料合計額が30万円以下の場合は、保険料の全額を損金へ算入可能。
※参考:「第3節 保険料等 9-3-5の2」国税庁
福利厚生として同時に活用できる
法人契約の生命保険で役員退職金の積み立てをするかたわら、生命保険という金融商品の特徴を利用して福利厚生としても活用できます。
役員退職金の準備として加入される生命保険は「長期平準定期保険」「逓増定期保険(ていぞうていきほけん)」「終身保険」が一般的です。
法人契約の生命保険は積立制度を利用して10年後、20年後に多額の解約返戻金を受け取れるだけでなく、死亡保険金や高度障害保険金など生命保険としての側面があります。
保険商品によって福利厚生として活用できる保障内容が異なるため、加入前に損金算入割合にかかる税金と合わせて、自社の方向性に合っているか確認が必要です。
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法人保険の活用事例集

役員退職金の支払いにかかる税金と計算方法のまとめ






